一流の職人と二人三脚のものづくりの場〜記念品やノベルティをオーダーメードで
贈り物を選ぶとき、思いうかぶのは受け取った人の表情だろう。あっと驚いてくれるだろうか。こんなのがほしかったと喜んでくれるだろうか。その気持ちは、たとえ企業がお客さまや社員のために用意する記念品や特別な贈り物でも同じにちがいない。日本各地の一流の作り手にオーダーメードで贈り物を作ってもらう、その橋渡しをするサービスがある。地域活性化事業を展開するライヴスがてがけるTSUKURIBAだ。(https://www.tsukuriba.net/)
日本各地の一流の作り手とお客さまのあいだにTSUKURIBAのプロデューサーがはいり、オリジナルのものづくりを実現するという。このサービスを利用し、ゲームソフト開発のゲームフリークは創業30周年の記念に輪島の漆塗汁椀(千すじ)セットを作った。感謝をこめて時間をかけて480個のお椀を作った舞台裏を、ゲームフリークの濵本裕香さん、輪島キリモトの桐本泰一さん、ライヴスの春日ゆかりさんに語ってもらった。
独特のざらっとした風合いと時間とともに変化する色
――まずはゲームフリーク30周年記念のお椀を見せていただけますか。
桐本 オリーブグリーンと黒っぽいお椀2個とおはし2膳のセットを作りました。今はどちらも黒っぽく見えますが、5年10年と時間がたつにつれ色が変化して、緑はよりグリーンがはっきりした色と、黒っぽい方は赤茶けた色に変化していきます。そんな変化も使いながら楽しんでいただけたらと思っています。
――色などもお客さまであるゲームフリーク様が選ばれたのですか。
春日 そうなんです。代表的な赤や黒色以外の色や、ツル・ピカっとさせる塗り方からザラっとさせる技法などいくつか種類があり、いろいろなサンプルを実際に見たり触っていただきながらご検討いただきました。
ゲームフリーク様が非常に気に入ってくださったのが、千すじ技法という、漆に輪島産の珪藻土(けいそうど)を混ぜて特殊な刷毛を使って塗り込んで仕上げる技法でした。表面にできるこまかなすじ模様が特徴なんです。
桐本 木地の形にも実は工夫があって。お椀のうらにはゲームフリーク様のロゴマークをいれました。マークのかすれも忠実に再現してるんです。底の部分は通常は少し湾曲しているのですが、このマークを入れるため底の部分を平らにする工夫もしてあります。
会社が30歳、みそじだからみそしる。汁椀をつくろう
――当初、ゲームフリークからはどのような依頼だったのでしょうか。
春日 30周年の記念品を作りたいとオーダーでしたが、何を作るかというところからご相談をいただきました。そのなかで「会社が30歳だから、みそじでみそしる。汁椀はどうでしょう」とおっしゃって。それを聞いてすぐにお椀をつくる様々な職人さんのなかでも、シンプルながら形状美と機能性のバランスを持つ商品を作られている輪島キリモトさんなら、ゲームフリーク様のようなクリエイティブな企業の様々なニーズに応えられると思い、すぐ連絡してサンプルを用意してもらいました。
とても使い手・買い手想いで、いろいろなことに取り組んでいることを知っていたので、オーダーメードでの発注における信頼がありました。
桐本 ライヴスとは2008年にRinという日本の工芸品を全国から集めた店舗がオープンしたときからのお付き合いで、頻繁にコミュニケーションをとってお客さまのニーズをお聞きしたり、作り手側の新しい試みをご紹介したりと密にお付き合いをしてきました。そうした積み重ねの結果、私たちにオーダーを頂けたのだと思います。
春日 ゲームフリーク様のオーダーを頂いたときは、TSUKURIBAというプラットフォームはまだありませんでしたが、ライヴスの事業として法人向けに職人やものづくり事業者によるオーダーメードの物づくりの事業を手がけていました。2021年からはこの事業をTSUKURIBAという新しいプラットフォームにし、全国の様々な分野の作り手と買い手であるお客さまを結ぶ場を育てていこうと思っています。特徴は作り手とお客さまの間にプロデューサーが橋渡し役として入り、お客さまのニーズや要望と、作り手の技術的な可能性を調整することです。プロデューサーは私のような社員もいますが、理念の共感した外部のデザイナーさんたちも参加してくださっています。
桐本 ゲームフリーク様の際も、春日さんの調整で本当に助けられました。
お椀の形や色、ロゴの再現性など、ゲームフリーク様にご確認いただく事項は細かい部分まで含めて多岐に渡っていたため、われわれが直接やりとりして成し遂げるのは難しかったと思います。春日さんが何度も何度も、ゲームフリーク様の要望とのコミュニケーションを粘り強く進めてくださったからこそ成功したと思っています。
――大プロジェクトです。どう取り組まれたのですか。
桐本 480個というのは近年では輪島でもめったに聞かない規模のオーダーです。輪島塗は他の漆器と比べても工程数が多く制作に時間がかかります。そもそもお椀の土台である木地が準備できるか。どこに何個あるかを調整したところ、一度に480個を用意するのは無理だが、納入時期をずらせばなんとかなることがわかりました。
春日 桐本さんから輪島塗の工程についてよく聞いていたので、時間がかかる理由もよくわかりました。ゲームフリーク様に輪島塗の工程を詳しく説明し、時間がかかるため分納にさせていただけないか相談したところ、ありがたいことにご理解いただくことができました。
桐本 春日さんは、塗りや色のサンプルをもって、何度も何度もゲームフリーク様を訪問し、調整してくれました。ゲームフリーク様もものづくりの会社ですよね。だからわれわれのものづくりに深い理解をいただけたことも非常にありがたかったです。
お客さまも作り手も幸せなものづくりの場にしたい
――TSUKURIBAのような場の意義をどうお考えですか。
桐本 問屋と小売りの販売力に頼っていた時代ではなくなってきました。作り手も数年先をみすえて、次の一手を積極的に考えなければいけない時代です。そういう意味で、TSUKURIBAのような場に参加することはとても大きな意味がある。お客さまからいつ問い合わせがきても大丈夫なように、自分たちのものづくりを説明できる写真や文章を用意したり、見学もしていただける態勢を整えるなどの努力をすることが第一歩ですね。今回のゲームフリーク様のお椀を制作したことで、こうした気持ちをさらに強くしています。
春日 日本にはおひとりで活動する職人さんから中小サイズの事業者まですばらしい作り手がたくさんいますが、自分で販路を見つけたりスポットライトを浴びる職人や商品はほんの一握りです。多くの作り手はサンプルの用意がないからお客さまに説明できないとか、何ができるかをメニュー化できておらず、オーダーの獲得にうまく結びつかないことがあります。売り場に商品が並んでも作り手の名前が隠されてしまうことも多く、お客様にその存在を知られない人はたくさんいます。このままでは、10年から20年したら伝統が途切れてしまう技術もあるでしょう。TSUKURIBAを介して、こうした作り手にオーダーが増え、もらった人が喜んでくれるだけでなく作り手にも意義がある、そんな価値のあるものを作っていきたいと思っています。
ものづくりの志を感じる周年記念品になった
株式会社ゲームフリーク経営管理部総務 濵本 裕香さん
ゲームフリークは『ポケットモンスター』シリーズなどのゲームを企画・開発してきました。2019年4月に30周年をどう迎えようかと検討を始めたときに、「せっかくの機会なので、何か形に残るものを作ってお世話になった方たちに渡したらどうだろうか」と考えたのです。30周年を記念して、なにかオリジナルで日々使える特別なものを作れば、ずっと楽しんでいただけるなと。
それで、ライヴスにご相談しました。「会社が30歳だから、みそじでみそしる」という私たちのおもいつきを聞いたライヴスの春日さんが、「輪島塗はどうですか」と提案してくださいました。輪島塗でオリジナルを作れるなんて、私たちだけでは思いつかなかったです。
オーダーの個数が多く分納にしていただくなどのスケジュール調整から、色味や塗り方のご提案、お椀の底に入れたロゴマークなど、何度も何度もサンプルをもってきてくださり、粘り強くキリモトさんと調整していただきました。
春日さんの提案で、お椀を入れる特注のロゴ入り桐箱、また、風呂敷でのラッピングも手配頂きました。箱の中には、キリモトのオリジナルのパンフレットを入れ、各工程を担当した作り手さんのお名前も入れていただきました。漆器に詳しくない人からお好きな方まで、楽しんで読んでいただけるのではないかと思いましたし、全部手作りで作り手の顔が見えるのがとてもいいと思ったのです。
ゲームフリークがゲームを作るうえで大切にしてきたのが「いいものをつくる」ということです。設立当時から「遊びの面白さ」にとことんこだわって作る姿勢は、じつは変わっていません。小さなこだわりの積み重ねが、こころから楽しめるゲームにつながります。
キリモトさんとのお椀づくりは、私たちのものづくりとまさに共通するものがありました。ゲームフリークらしい30周年の記念品になったと思っています。
TSUKURIBAはお客さまの要望に合わせ全国の一流の作り手に制作をオーダーし、市販品とあまりかわらない適正価格でオリジナルの品を作るプラットフォーム。提案から制作までプロデューサーがサポートし、全国のものづくり事業者と二人三脚で最高の逸品を制作する。
サービスの活用例
・社員のエンゲージメントアップ施策のギフト、顧客への感謝の気持ちを込めた記念品やノベルティの制作
・特別な限定商品の開発
・新しい価値観でスモールビジネスを始めたいアーティストやインフルエンサーのためのファン向けグッズ開発
※2021年3月19日~2021年4月22日に日経電子版広告特集にて掲載 。
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